星雲にも色々あります

星雲という言葉から、あなたはどんなものを思い浮かべますか?

わたしが真っ先に思い浮かべるのは、夜を飾る天の川の美しい写真です。
淡く伸びる白い光は川のようにも見えますが、わたしには星空に棚引く雲のように見えます。

地球から見る天の川
天の川銀河の黒い部分は、実は暗黒星雲 Photo by Pixabay / Kanenori

ですが天文学では、天の川は星雲ではなく銀河です。
かつては銀河も星雲として扱われていましたが、現代の天文学では別物として定義されます。

では、星雲とはいったいなんでしょうか。

星雲とは

星雲(nebulaネビュラは、宇宙空間に漂うガスやちりが集合したものです。

宇宙空間は完全な真空の世界で、なにも存在していないと思われがちですが、水素ヘリウムなどの星間ガスや、ケイ素炭素などで構成される宇宙塵うちゅうじんなどの星間物質が存在しています。

しかし、これらはごく少量しか存在していません。どのくらい少量かというと、1cm3あたりに水素原子1個程度です。地球の大気1cm33×1019の分子が含まれていることを考えると、比較にならないほど少ないですよね。

ですが、それらが互いの重力によって収縮したり、超新星爆発などの影響を受けたりして、何光年もの規模で寄り集まっていくと、やがて恒星を作り上げるほどの物質量になるのです。

このようにして形成された星間物質の濃い領域が、星雲と呼ばれるものです。

いろいろな星雲

では、星雲にはどのような種類があるのか見てみましょう。

分類概要代表的な星雲
暗黒星雲真っ黒。背後の星の光によって存在が確認できる。
星が生まれる場所。
オリオン座の馬頭星雲
輝線星雲散光星雲のひとつ。
暗黒星雲から進化した星雲で、恒星の紫外線によって赤く輝く。
オリオン大星雲(M42)
反射星雲散光星雲のひとつ。
近くの恒星の光が塵に反射することで輝いて見える。
輝線星雲とは対照的に、こちらは青く輝く。
オリオン座のM78
惑星状星雲恒星の外層がゆっくりと流れだして星雲となったもの。
輝線星雲と同様、恒星の紫外線で電離したガスが輝く。
こと座の環状星雲 (M57)
超新星残骸超新星爆発の衝撃で吹き飛ばされた外層が星雲となったもの。
高速で放出されたガスが、周囲のガスと衝突して輝く。
おうし座のかに星雲 (M1)
星雲の一覧

暗黒星雲

馬頭星雲
オリオン座の馬頭星雲 Photo by NASA / ESA / the Hubble Heritage Team

その名前のとおり、背後の星の光を遮っているために真っ黒に見えます。暗黒星雲は分子雲とも呼ばれ、高密度のガスと塵が寄り集まっている星の製造所です。

暗黒星雲の中でも特に高密度な領域(コア)が自己重力で収縮していくと、やがて恒星の赤ちゃんともいえる原始星が生まれます。原始星は暗黒星雲の中で同時に多数作られると考えられていて、それらのうち一定以上の質量を得て核融合反応を開始した天体が恒星となります。

散光星雲

暗黒星雲とは対照的に、光を放っている星雲が散光星雲です。
散光星雲が輝くのは、暗黒星雲の中で生まれた星の影響によるものです。つまり、暗黒星雲が成長したものが散光星雲になる、とも言えるでしょうか。

散光星雲には輝線星雲反射星雲2種類があり、それぞれ輝いている仕組みが異なっています。

輝線星雲

オリオン大星雲
オリオン大星雲 M42 Photo by ESO / G. Beccari / CC BY 4.0

散光星雲のうち、赤く光っている星雲が輝線星雲です。
輝線星雲が輝くのは、近くにある高温の星が放射する紫外線によるものです。

星間ガスの主成分である水素原子に紫外線が当たると、原子を構成している部品のひとつである電子が紫外線のエネルギーによってはぎ取られてしまいます。これを電離といいます。
あとで電離した電子は再び陽子と結びつくのですが、この再結合の時に特有の赤い光を出します。これが輝線星雲が赤く輝く仕組みです。

輝線星雲を作るような高温の星は短命であるため、輝線星雲が見られる領域には最近生まれた若い星があると推測することができます。

輝線星雲を作るような高温の星は短命であるため、輝線星雲が見られる領域には最近生まれた若い星があると推測することができます。

反射星雲

M78
オリオン座の反射星雲 M78 Photo by ESO / Igor Chekalin / CC BY 4.0

赤く光る輝線星雲とは対照的に、青白く光って見えるものが反射星雲です。

反射星雲と輝線星雲が輝く仕組みは全くの別物です。反射星雲が輝いているのは、近くの恒星の光が宇宙塵によって散乱しているためです。
宇宙塵は光の波長と同程度の大きさしかないため、波長の短い青い光をより効率的に散乱させます。そのため、反射星雲は青く輝くのです。

反射星雲は輝線星雲よりも規模が小さく、ガスを電離するほどの紫外線を出していない温度が低い恒星の周囲に見られます。また、反射星雲と輝線星雲は近くに存在していることが多いようです。

惑星状星雲

太陽の0.08倍〜8倍以下の質量を持つ恒星は、その生涯の終末期に赤色巨星となります。
膨張した恒星の表面からは大量のガスが流れ出し、そうして球状双極状の殻を形成したものが惑星状星雲です。

こと座の環状星雲 M57
中心に白色矮星が見える。こと座の環状星雲 M57 Photo by NASA / JPL-Caltech / ESA, the Hubble Heritage Team STScI / AURA

赤色巨星はやがて収縮し、星雲の中心部には外層を失って露出した高温の白色矮星が出現します。惑星状星雲が輝くのはこの白色矮星が放射する紫外線によるものですが、これは輝線星雲が輝く仕組みと同じです。

惑星状星雲は秒速数十キロメートルの速さで膨張を続け、数万年かけて宇宙空間に溶け込んでいきます。

超新星残骸

惑星状星雲とよく似ているのが超新星残骸です。

惑星状星雲は太陽の0.08倍〜8倍以下の質量をもつ恒星が終末期に形成するものでしたが、太陽の8倍以上の質量をもっている恒星の場合は超新星爆発を起こします。

超新星爆発とは核融合を終えた巨大な恒星が重力崩壊を起こす現象のことですが、その際に発生する衝撃波によって吹き飛ばされた恒星の外層が超新星残骸となります。

かに星雲
おうし座のかに星雲 M1 Photo by ESO / CC BY 4.0

超新星残骸が輝くのは輝線星雲や惑星状星雲と同様にガスの電離によるものですが、電離のプロセスは他の星雲に見られる紫外線によるものではありません

超新星爆発によって放出されたガスの速度は秒速千キロメートル以上になります。この高速のガスが周囲の星間ガスと衝突することで電離が起こり、超新星残骸は輝くのです。
また、この激しい衝突によってガスは106Kもの高温となり、X線が放射されます。そのため、超新星残骸はX線でも観測することが可能です。

おわりに

天文宇宙検定の勉強をしていたとき、星雲の違いがよく分からずに苦労しました。
同じような悩みを持った人たちのためにそれぞれの違いをざっくりとまとめてみましたが、わずかでも理解の助けとなれば幸いです。

ここでは割愛しましたが、それぞれの星雲の温度や密度などにも明確な違いがあります。興味のある方は、美しい星雲の画像を眺めるついでに、さらに深掘りして調べてみると面白いと思います。

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