わたしたちは太陽から生まれた

太陽とは、わたしたちが暮らしている地球が属する太陽系の中心となっている恒星です。

今こうしてわたしたちが存在していられるのは、太陽のおかげです。
太陽から放射される熱が地球を暖め、そのエネルギーによってあらゆる生命が芽生えました。新鮮な空気を呼吸したり、食事をしたりすることができるのも、全て太陽があればこそです。

わたしたちは太陽から生まれた」と言うと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、それほど太陽は生命の根源となる天体なのです。

そんな太陽について、少し考えてみましょう。

太陽について

まずは太陽についての情報を簡単に整理してみましょう。

概要

太陽
Photo by NASA on Unsplash
太陽の年齢46億年
大きさ直径 約139万km
質量約1.989×1030kg ※1
組成水素 73.5% ヘリウム 24.9% その他 1.6%
地球からの距離 約1億5000万km ※2
※1 この質量は、太陽系全体のおよそ99.86%を占める。
※2 この距離を1AU(Astronomical Unit)と呼び、距離を示す際の単位として使用されています。日本語では1天文単位と呼ぶ。

太陽はとても巨大な天体であり、大きさは地球の109倍もあります。
質量については33万倍もあるのですが、なんとこの質量は「太陽系」に存在する全ての物の重さの合計に対して、99.86%もの割合を占めています。

太陽系には地球や月だけでなく、火星や木星などの惑星や小惑星がたくさんあります。
しかし、それらを全部合わせても太陽には到底かなわず、残りのたった0.14%の質量にしかならないのです。太陽がどれだけ圧倒的な存在なのか、よく分かりますね。

太陽には地球のような地面は存在しておらず、高温のガスのみで構成されています。
そのガスのうち、ほとんどが水素ヘリウムです。

核融合反応
重水素と三重水素の融合により、高いエネルギーを持ったヘリウムと中性子ができる

太陽が輝いているのは、核融合反応によって水素をヘリウムに変換し続けているからです。
核融合とは原子核同士が合体して別の原子核に変化するというものですが、その融合の際に莫大なエネルギーが放出されます。そのエネルギーが1億5000万kmもの宇宙空間を伝わり、わたしたちの暮らす地球まで届くのです。

形成

今から46億年前。
宇宙空間を漂っている小さなちり、水素やヘリウムなどのガスが長い時間をかけて寄り集まり、巨大な球状の雲(分子雲)が生まれました。それらは互いの重力で引き寄せ合い、次第に回転と収縮をはじめます。

やがて分子雲は球状から平らな円盤状(原始惑星系円盤)になり、中心部はより高密度・高温になっていきました。

原始惑星系円盤
原始惑星系円盤の想像図 Photo by ESO / L. Calçada / CC BY 4.0

中心部の密度がどんどんと高まっていき、圧力が原子核の構造すらも変質させるほどに高まった時、原子核同士が融合する「核融合」が起こりました。
こうして、太陽はわたしたちが知っている現在のような姿となったのです。

構造

太陽は巨大なガスの塊です。その構造について、内側から順に見てみましょう。

太陽の構造
太陽の構造 

中心核

太陽の中心にある、半径10万キロメートルほどの核。
常に水素による核融合反応が起こっていて、約1600万℃という非常に高温・高密度なガスのかたまりです。太陽のエネルギーの大半がここで生み出されています。

放射層

核のすぐ外側にある層で、非常に密度が大きい場所です。
中心核で発生したエネルギーは高密度のガス粒子とぶつかってなかなか前に進むことができず、放射層を抜けるのに何万年もの時間がかかってしまいます。

太陽表面から放たれた光は約8分ほどで地球へと到達しますが、その光の元となったエネルギーが中心核で生み出されたのは何百万年も前、ということもあります。

対流層

放射層の外側にある、対流によってエネルギーを外側へと送り出している層です。
前項の放射層ではエネルギーは放射によって外側へと出ていきますが、こちらは対流によって外側へと運ばれていきます。

ちなみに、放射と対流の違いについては以下のとおりです。

放射とは…
可視光、赤外線、紫外線などの電磁波が熱を伝達する現象。地球と太陽の間のように、二物間のあいだが真空状態でも熱が伝わる。
対流とは…
熱い(体積が大きい=密度が低い)ものは上昇し、周囲の比較的冷たい(体積が小さい=密度が高い)ものが下へ流れ込む、ということが繰り返される現象。

光球

太陽の表面部分にあたる厚さ数百kmの層。
温度は約6000℃ほどで、わたしたちが視覚的に感じることのできる太陽の光はこの光球から放出されたものです。

彩層

光球の上部に存在する薄い大気の層。
2000kmほどの厚さがありますが、その温度分布には大きなムラがあります。約6000℃の光球表面から500km上空では4500℃まで温度が下がるのですが、さらに上空にいくと反対に温度が上がっていき、上端では2万℃ほどまで上昇します。

通常は光球の光が強いために彩層の光を見ることはできませんが、皆既日食の時には月の周囲を取り巻くように赤く輝く彩層を見ることができます。

皆既日食によって目視できる彩層
皆既日食の前後を捉えた画像。赤く滲んでいるのが彩層 Photo by P. Horálek / ESO / CC BY 4.0

コロナ

太陽を構成するものの中でもっとも外側にあるのがコロナです。

彩層と同様に希薄な大気の層ではありますが、コロナの温度は彩層よりもずっと高く、100万℃以上にもなります。これはとても不思議な現象です。
太陽表面の光球でもおよそ6000℃ほどしかないのに、どうして中心核からより離れたコロナの方が高温になるのでしょうか。

実は、この原因はまだはっきりとは分かっていません。
現在も研究・観測が進められているところですが、以下の二つの仮説が有力視されています。

ナノフレア説
小さなフレア(太陽表面での爆発)が無数に発生してコロナを加熱しているという説
波動加熱説
太陽表面から無数に伸びる磁力線が揺すられることでエネルギーがコロナへ運ばれているという説

特徴的な現象

太陽にはとても特徴的な現象がいくつもあります。
代表的なものを挙げてみましょう。

プロミネンス

プロミネンス
画像右上に腕のように伸びているのがプロミネンス Photo by ESA / NASA / SOHO

彩層の一部が太陽の磁場の影響によってコロナの中に噴き上がる現象です。
プロミネンスはとても巨大であり、時には数十万kmにもなることがあります。発生期間にはかなりの幅があり、1日で消滅してしまうこともあれば、数か月にも渡って形状を維持することもあります

太陽風

太陽から放出された電気を帯びた高温の粒子(プラズマ)が高速で太陽系全体へと広がっていく現象を太陽風と呼びます。これが地球の大気と反応すると、オーロラが発生します。

オーロラ
太陽風が地球の大気と衝突した際に発する光がオーロラの正体 Photo by Hans on Pixabay

オーロラは神秘的で美しい光景を作り出します。
ですが、太陽風があまりにも強くなってしまうと地上での通信ができなくなったり、人工衛星の機器や船外活動中の宇宙飛行士に大きな被害をもたらしたりする磁気嵐を発生させることがあります。

太陽風はわたしたちの生活に大きな影響をおよぼすことがあるため、現在では地球の気象状況のように常時監視されています。宇宙天気予報として公表されていますので、興味のある方はご覧になってみてください。

「国立研究開発法人情報通信研究機構 宇宙天気予報 」 https://swc.nict.go.jp

黒点

太陽表面である光球に現れる黒い点状の部分で、大きいものになると3万kmもの黒点が発生することもあります。温度はおよそ4000℃ほどと周囲よりも2000℃ほど低くなっているため、光が弱まって黒く見えます。

太陽黒点
太陽黒点 Photo by NASA / SDO

黒点の温度が低いのには磁場が関係しています。
光球の下にある対流層では強い磁場が形成されます。その磁場が光球表面に出てくると、太陽内部から上昇してきたエネルギーがその強い磁場に遮られて周囲に広がってしまいます。すると、他の光球表面よりも温度が低い箇所ができます。それが黒点です。

黒点のこの強力な磁場は、次に紹介する「フレア」の発生原因とも密接に関わっています。

フレア

フレア
フレア Photo by NASA / GSFC / Solar Dynamics Observatory

太陽表面で発生する爆発現象で、そのエネルギーは広島型原子爆弾1億発分にも匹敵するほど強力です。
フレアは磁場のエネルギーが急激に解放されることにより発生するのですが、前項で触れた黒点も強い磁場の影響を受けて形成されます。そのため、フレアは黒点の周囲で発生することが多いです。

フレアと同時に「コロナ質量放出(CME:Coronal Mass ejection)」という電気を帯びた高温の粒子(プラズマ)の大量放出現象が発生することもあります。CMEもフレアと同様、磁場のエネルギーの解放によって起こります。
これらが強力な太陽風を発生させ、地球に磁気嵐を引き起こすのです。

コロナ質量放出
コロナ質量放出 Photo by NASA / GSFC / SOHO / ESA

太陽の最期

すべてのものには終わりがやってきます。もちろん、太陽も例外ではありません。
恒星の寿命は質量によっておおよそ決まっていて、太陽ほどの質量であれば100億年ほどで寿命を迎えます。

冒頭でも書きましたが、太陽は誕生から46億年が経っています。つまり、あと50億年ほどで太陽は終わりを迎えることになります。
太陽はこれから徐々に明るさを増し、膨張していきます。この理由は、核融合反応が進んで中心核の水素を使い果たしてしまうためです。

太陽の一生
太陽の一生を描いた想像図。左から右へと推移していく Photo by ESO / S. Steinhöfel / CC BY 4.0

中心部がヘリウムばかりになると、今度は中心部の外にある水素で核融合が起こり始め、太陽はどんどん膨らんでいきます。
このあと、中心核に溜まったヘリウムが核融合をはじめると一旦膨張は収まります。ですが、ヘリウムを使い切ってしまうと再び膨張が起こり、やがては外側にあるガスが宇宙空間へ全て放出されてしまいます。

あとには白色矮星と呼ばれる、太陽が末期に作り出す非常に高密度なコアだけを残して太陽は消滅してしまいます。

しかし、すべてが無になってしまうわけではありません。
放出されたガスが新たな星の材料となり、長い年月の後に、再び宇宙を明るく照らすことも起こりえるのです。

終わりに

太陽は私たちの暮らしになくてはならない存在です。
太陽の寿命はまだ50億年ほどありますが、それまでのあいだに太陽は今の何百倍もの大きさに膨れ上がり、地球よりも太陽に近い水星金星を飲み込んでしまいます。

地球からでも巨大な太陽が間近に見える
地球からでも巨大に見える膨張した太陽の想像図 Photo by ESO / CC BY 4.0

人類が誕生したのは、今から20万年ほど前だそうです。
太陽と比べれば歴史の浅い人類ですが、もし太陽の終末期まで種を存続することができたならば、太陽の終焉と共に地球を去らなければなりません。

一説によると、5億年後には植物が姿を消しはじめ、28億年後には地球は生命が存在できない死の星となるそうです。
その時になって慌てて地球を飛び出し、広大無辺の宇宙で迷子になるのは避けたいところです。
太陽が元気な今のうちから、新たなホームを探しておくほうが賢明かもしれませんね。

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