オールトの雲、Don’t Look Up

Don’t Look Up(ドント・ルック・アップ)」という映画をご存じでしょうか。

Netflixで配信されたアメリカのブラックコメディ映画で、レオナルド・ディカプリやジェニファー・ローレンスなどの豪華キャストの共演で話題となった大作です。

Don’t Look Up(ドント・ルック・アップ)予告編

ざっくりと物語のあらすじを説明すると、

未発見の彗星を観測した学生とその教授。二人が彗星の軌道を計算してみると、そう遠くない未来に地球に衝突することが判明する。オールトの雲と呼ばれる領域からやってきた彗星の脅威を世界に伝えるため、二人は奮闘していくが――。

という感じです。

彗星が飛来して地球がピンチ、という設定は使い古されていますし、まったく斬新ではありません。
ですが、本作の主題は物質主義的な現代社会への風刺であり、アメリカの某民間宇宙企業を彷彿とさせるようなデザインのロケットが出てきたり、小惑星に存在するレアメタルの利権をめぐる政治的な闘争があったりと見どころ満載です。
おすすめ作品なので、まだ見ていない方は是非ご覧ください。

ところで、
上で書いたあらすじに出てくるオールトの雲は、太陽系の果てとも言われる場所です。たまに天文関係のニュースなどでも耳にすることはありますが、比較的マニアックな用語のため詳しくは知らないという方も多いかもしれません。

というわけで、今回はオールトの雲についてご紹介いたします。

オールトの雲とは

オールトの雲とは、太陽系から1万~10万天文単位(AU)のところに存在する球殻状に氷と岩石の小天体が分布している領域です。

オールトの雲
オールトの雲の想像図。分かりやすく白い円形に描かれているが、実際はボールのような球殻状に太陽系を包み込んでいる。
Photo by ESO / L. Calçada / CC BY 4.0

オールトの雲に属する小天体が何らかの影響によって軌道を変え、彗星として太陽系の中心へとやってくることがあります。ここからやってくる彗星は長周期彗星と呼ばれ、200年以上の長い周期で公転しています。
冒頭でご紹介した「Don’t Look Up」に登場する彗星も、このオールトの雲からやってきた長周期彗星という設定です。

この領域には1兆個ほどの小天体が存在していると考えられていますが、遠すぎるために直接観測することはできず、現時点では太陽系の中心へやってくる長周期彗星の軌道から間接的にその存在が示唆されているだけです。

エッジワース・カイパーベルト

オールトの雲とよく一緒に語られるのが、エッジワース・カイパーベルトです。

エッジワース・カイパーベルト
Photo by NAOJ

こちらは地球などの惑星と同じ軌道面上にあり、太陽系の中心から30〜50天文単位のところにあります。太陽系の惑星として最も遠くにある海王星の外側に帯状に広がっていて、氷を主成分とする無数の天体が存在しています。

ここからやってくる彗星は、オールトの雲からやってくる彗星よりもずっと短い期間で太陽系の中心へやってくるため、短周期彗星と呼ばれます。

ちなみに、オールトの雲やエッジワース・カイパーベルトなど、海王星より遠くにある天体をまとめて太陽系外縁天体と呼んでいます。

おわりに

たまにニュースで話題に上がってくる彗星ですが、その彗星が短周期彗星なのか、それとも長周期彗星なのかを知るともっと彗星のことが面白くなるはずです。

太陽系の果てであるオールトの雲から何千年、何万年もかけてやってくる彗星もあります。

太陽系の俯瞰図
Photo by NAOJ

その途方もない旅路を想うと、宇宙の壮大さを感じずにはいられません。
人生は一期一会。それは彗星との出会いにも通ずるものです。自分たちが生きているあいだに太陽系の中心へとやってきたその巡り合わせに、なんだかトキメキませんか?

まぁ、もちろん―― その彗星が地球と衝突しない場合に限りますが。

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