ガンダム好きなら必ず耳にしたことのある単語、ラグランジュポイント。
個人的には、ニュータイプやプレッシャーに次ぐパワーワードだと思います。
ガンダムだけでなく、宇宙が舞台の映画やアニメなどでもこの言葉がよく登場するので、「よく分かんないけど、なんか強そうでカッコいい!」と思っている人も多いのではないでしょうか。もちろん、わたしもそう思っていた一人です。
現実の宇宙開発においても、ラグランジュポイントはたびたび話題に上がります。
2021年末に打ち上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)はラグランジュポイントのひとつであるラグランジュ2(以下L2。他も同様に略)付近で宇宙観測を行いますし、はやぶさ2が小惑星リュウグウへ向かう途中でL5を調査したことも話題となりました。
で、結局ラグランジュポイントってなんですか?
ラグランジュポイントとは
ざっくりと言えば、
天体A、Bという2つの天体があり、どちらかの天体がもう一方の回りを公転している時、互いの引力と遠心力がつり合う特殊な場所が5つ存在します。それがラグランジュポイントと呼ばれるものです。
この5つの場所に天体A、Bと比べて「無視できるほど質量の小さいモノ」が存在する場合、A、Bとの相対的な位置を変化させずにそこに留まることができます。この「無視できるほど質量の小さいモノ」とは小惑星や人工衛星を指します。
この関係性は太陽―地球系や、太陽―木星系、地球―月系のように、様々な天体間に存在しています。
ラグランジュポイントに留まることができるメリットとして、以下のようなものが挙げられます。
各ポイントの特徴
5つあるラグランジュポイントには、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。
主星を太陽、主星の周りを公転する天体を地球とする「太陽―地球系」を例に見ていきましょう。
L1、L2、L3
この3点は太陽と地球を通る直線上にあります。数学的にこの位置を求めたレオンハルト・オイラーに因み、「オイラーの直線解」とも呼びます。
しかし、これら3点は少し位置がずれただけで安定性を失ってしまうため、L4、L5と比べると不安定だとされています。そのため、ここに人工衛星等を投入する場合はラグランジュポイントの付近を周回するリサージュ軌道やハロー軌道を利用することが多いです。
L1
太陽と地球のあいだにあり、地球から太陽へ向かって150万kmのところにあります。
つねに太陽の手前にあるため、太陽観測衛星の運用に向いています。
関連衛星:観測衛星SOHO
L2
太陽から見た地球の裏側にあり、地球から150万kmのところにあります。
つねに太陽が地球の陰に入るため、太陽の影響を最小限に抑えて宇宙観測を行うことができます。
関連衛星:ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡
L3
地球から見た太陽の裏側にあるため、地球から直接見ることはできません。
ここには未知の惑星が存在しているという仮説がありましたが、現在では探査機の調査によって否定されています。
L4、L5
L4とL5は地球の公転軌道上に存在しており、両点とも太陽―地球と正三角形を成す位置にあります。
また、L4とL5はトロヤポイントとも呼ばれます。
この理由は、太陽―木星系のL4とL5に存在する小惑星の一部にトロイア戦争の英雄たちの名前を付けたためで、他の系においてもこの2点をトロヤポイントと呼んでいます。
トロヤポイントはオイラーの直線解(L1~L3)に比べると非常に安定した平衡点であるため多数の小惑星の存在が期待されていますが、現時点ではまだ2つしか発見されていません。
L4
太陽から見て地球の60度前方の公転軌道上で、地球を先行する位置にあります。
関連天体:小惑星2010 TK7、2020 XL5
L5
太陽から見て地球の60度後方の公転軌道上で、地球の後ろを付いてくる位置にあります。
2017年、はやぶさ2は小惑星リュウグウへ向かう途中でL5の調査・撮影を行いましたが、残念ながら小惑星は発見されませんでした。
おわりに
これからの宇宙開発において、ラグランジュポイントはますます重要になってきます。
再び月面に人類を送るだけでなく、その後には火星にまで行こうとしているNASAの新たな宇宙探査計画である「アルテミス計画」ですが、そのプロジェクトに大きくかかわってくる月開発や火星探査の拠点となる月軌道プラットフォームゲートウェイは、地球ー月系のL2に付随する軌道(NRHO)に設置される予定です。
ぜひ今後も注目していきましょう。